International Doctors (IDs)

日本は世界で戦える

IDs

Dis 1. 海外に出るメリットは? 基礎研究医の場合

皆様、初めまして。私は、倉橋 正明と申します。98年に名古屋大学医学部を卒業し、消化器内科医として卒後6年は一般病院、その後5年母校の大学病院で臨床に携わっていましたが、2009年に渡米しネバダ大学リノ校の生理学研究室でポスドクとして基礎医学研究を開始、以後同じ研究室で消化管、主に大腸の研究を続け、昨年2018年にNIHのR01グラント(アメリカで一番古い、ラボ経営の基本となる5年の研究費で、人件費も込みで年間約5800万円程度です。)を初めて獲得してPI(Principal Investigator)となり消化管の研究室を主催しております。

今回のお題は「海外に出るメリットは?」と言う事で、基礎研究医の立場で書かせてもらいます。メリット、デメリット両方ありますが、メリットに絞って書かせて頂きます。なお、一言で海外と言っても場所によって千差万別で、私が働いているアメリカ内でも、施設やPIによって千差万別だと思いますので、あくまで私自身が感じたメリットとしてお読み下さい。あくまでもn=1の意見です。

 

  • 何はともあれ英語力が身に付く。これは恐らく、英語圏に出た全ての人に共通するメリットだと思いますが、確実に英語力は身に付きます。臨床医も研究医も、日本ではなかなか英会話や英語討論の勉強に時間を取れないと思います。一人で勉強するのは限界があるし、駅前留学しても、研究に関する議論などできるはずもなく。。。でも、医師になって博士号までとったような先生方であれば、英文読解と英作文はそれなりに出来て土台はもうあるので、後は実践あるのみなんですよね。なので、英語圏に出て一月も英語に囲まれて生活していれば、日本では到底到達できない所まで英語力を高める事ができます。もし留学するチャンスが目の前にあるのに、自分の英語力が不安で二の足を踏んでいるのなら、迷わず飛び込むべきだと思います。

 

  • 世界の広さを実感できる。アメリカのラボでは何処でも同じだと思いますが、頻繁に(多い時で週一くらい)セミナーが行われて、そのラボの専門領域の他大の権威達がやって来て話をしてくれます。アメリカにいると米国内で行われる学会も、日本にいる時と比べて参加し易く、多くは世界中から集まる国際学会なので、沢山の権威達に出会う機会があります。すると、世界中の権威達とほぼ顔見知りになりますので、世界、世界と言っても、だいたいこの辺の人たちなんだなと言う実感が持てるようになり、闇雲に恐れる事も、また軽視し過ぎる事もなく、実態を把握できるようになります。これは、研究を続けていく上で、自分のアイデアに対する大きな自信になると思います。

 

  • 研究が楽しい。日本では本当に雑用が多い。特に基礎研究医の場合、容赦無く臨床業務が降って来ます。なので、研究に当てられる時間が少なく、遅々として進まず、研究を楽しめなくなります。一方アメリカに来れば、臨床業務はありませんので、100%研究に打ち込めます。そして、ラボにもよりますが、私のラボは消化管の研究に特化したラボで、その道の大家が沢山いるので、実験中に生じた疑問はその日のうちに議論を持ちかけ、それなりの答えが出て来ます。研究がスピーディーにストレスなく進むと、心から研究を楽しめるようになります。たとえ2−3年であっても、この経験はとても貴重なものになると思います。

 

  • 家族との時間や自分の時間が持てる。これもラボによりますが、多くのアメリカンラボは、基本的に労働時間が9−5時です。もちろん自由ですので、残りたければ残ればいいし、5時に帰っても誰も何も言いません。日本ではまず有り得ない事です。ですので、家族との時間や自分の趣味の時間が持てるようになります。子供が小さければ子育てに参加でき、学生時代の趣味があれば趣味を再開できます。かく言う私は、自分の唯一の趣味である高校大学と持てる時間の全てを捧げたテニスを、大学卒業後初めて11年ぶりにアメリカの地で再開する事ができました。また、有給休暇も自由に使えますので、家族でアメリカ中を観光する事も可能です。

 

  • 日本の良さが分かる。これはメリットなのかデメリットなのか、微妙なところですが、自分にとっては良かったと思っているので、メリットとして書かせて頂きます。アメリカにいると、色々な人種と接する事になります。しかも、働いていると、利害関係が相反し、時には争わなければならない事もあります。具体的な事例を述べる事は避けますが、様々な場面で日本の良さを再認識させられます。日本にいる限り気付かないであろう事ばかりです。医療などの制度や安全面、食事の面でも同じですが、海外に出なければ分からない日本の良さに気付くことができると言う事は、今後の人生に置いて宝物になると思います。

以上が、私が今思い付く基礎研究医として海外に出るメリットです。もちろんデメリットも沢山ありますが、2−3年程度海外に出るだけなら、基礎研究医を目指す人にとっても、今は基礎研究医をしているが、いずれ臨床医に戻るつもりの人にとっても、メリットの方が遥かに大きいと思います。チャンスがあれば、どんどん出ていくべきだと言うのが私の意見です。