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Dis 1. 海外に出るメリットは? 匿名系麻酔科医の場合

初めまして。

表題について投稿させていただきます匿名系麻酔科医のゆるふわますいと申します。他の方々が実名なので申し訳ない気分ではありますが、もうしばらく匿名で活動しようと思います。誰だか気付いたとしても温かい目で見守ってやってください。

 

アメリカの臨床留学、就職のメリットについて書きます。

アメリカで働くと考えた時に、仕事内容(医師・医学的なこと)よりも日米間の雇用・労働条件比較が頭に浮かびました。これはそもそも自分は仕事が趣味ではないですし、医療や医学に長時間没頭できる体質でもないからです。もしかしたら自分自身の家庭に他に医療関係者がいないことも関係しているのかもしれません。

というわけで仕事面のメリットを上げると、

  • 労働条件がいい
  • 選択肢が増える

以上に集約されると考えます。

1つ目の労働条件についてですが、科によっても異なるので麻酔科に限ったお話とします。麻酔科のキャリアの大体の流れをまず説明しますと、レジデンシーが4年、フェローシップをやるならさらに1年、その後はアテンディングとしてアカデミックな道に残るかprivate practiceに進みます。仕事の大変さは人の感じ方にもよりますが、基本年数を重ねるごとに楽になります。給与はアテンディングとなったら跳ね上がります。

*1

大変なレジデンシーの期間ですら、日本の後期研修と比べると時間的には楽だと感じました。朝6時半から夕方3-5時の間働くことが多いです。金曜日や件数の少ないときは午後1ー2時に終了といったこともあります。コール(当直)は月3ー4回程度で忙しさは完全に病院に依存します。自分は日本では三次救急の病院でしか働いたことがなかったため、どこにいっても楽に感じます。アテンディングになると、病院に来る時間は朝7時から7時半位が多く、帰る時間は残り番やコールでないなら午後2-3時になります。基本自宅待機のコールになります。

給料に関していえばレジデントは55-65Kの範囲に収まると思います。アテンディングは不利な契約を除いてフルタイム250K以下は聞いたことがありません。Private practiceなら350-450Kあたりが多いでしょうか。地域性や州税などによっても可処分の量は変わってきます。

労働日に関しては、レジデントは有無を言わさずフルタイムですが、アテンディングは契約で働く日数を決められます。例えば日本では週3日勤務のママさん麻酔科医だと少し肩身が狭い思いをする人がいるかもしれませんが、こちらではそういったことを気にしないで済みます。大学病院などでは週1ー2日臨床で他は研究をする日としている人もいます。その場合でも外でバイトしなくても、ある程度の収入が臨床の部分で賄えるようになっています。

 

2つ目の選択肢についても触れていきます。働く場所、働くスタイルの選択肢の多さはとても重要と考えています。当たり前のことですが人生≠仕事なので、よほど合わないストレスフルな仕事場は変えてしまったほうがいいです。ただ選択肢が限られると、特に1つしかない状況だと搾取される対象となってしまいがちです。以下のダイヤの取引の話を引用します。

たとえば、あなたが1億円のダイヤを持っていたとして、あなたは10分以内にそれを必ず売らなければならないとしよう。それが本物かを鑑定できるのがあなたの周りに僕しかいないとしよう。僕は一億円の価値があると知っているとして、僕はいくら提示するか?それは、必ず1円である。なぜなら、あなたには他の選択肢がないと僕は知っているからだ。よって、他の選択肢である0円に1円を足せば、取引が成立する。僕が慈善事業ではなく取引をしようとしているのなら、親切に1億円を提示する理由はまったくない。

しかし、僕の横に、もう一人鑑定できる人がいたとしたらどうなるか?そうすると、あなたには「もう一人」に売るという選択肢が生まれる。交渉力は完全にあなたに移行する。あなたは、限りなく一億円に近い価格でそのダイヤを売れるだろう。なぜなら、僕は9999万9999円で買っても利益がでるからである。

あなたが搾取されるとしたら、それがあなたの実力だからではない。あなたに選択肢がない時には、あなたの価値は限界すれすれまで低く扱われるのだ。

上の例は極端ですが、日本では様々な理由で、事実上医局しか選択肢がないという麻酔科医が数多く存在してると思います。それによって労働時間や収入を制限されてしまいます。もちろんそういう労働スタイルが好きな方も多くいます。ただ自分はそういうのが苦手でしたし、このスタイルから抜け出したい麻酔科医も少なくないはずです。そういった状況がフリー麻酔科医の増加や、昨今の新専門医機構更新要件にも顕れています。*2

アメリカでの選択肢の多さに話を戻すと、医局自体が存在しないので基本的には信頼があれば色々な病院を渡り歩けますし、上に挙げた労働日の数を選択できることも選択肢が増えるうちの一つです。アテンディングを数年経験した後に、フェローシップを行って専門を増やすということもできます。なんだったら日本に戻るといったことも選択肢の一つになります。あとはアテンディングでレストラン経営などの副業をしている人もよく見かけます。時間や多様性の多さから他分野に進む人もいます。

詳細を書き出すと際限がないので、今回は以上に留めておきます。

 

麻酔科のお仕事内容に関してのメリットをサラッと挙げると、

  • 共通の知識土台

使う教科書が一緒で、専門医になるための試験が年1回以上あるので、皆ほぼ同じような知識を共有しています。何をよく知っていて、何をあまり知らないか、が把握しやすいので教育の効率もいいです。

  • 教科書通りの医療

教科書やuptodateはアメリカの知識やプラクティスが多く、日本にいたころは「こんなのやってないな」と思うことがありましたが、こちらでは学習した通りのことが実践されています。保険との兼ね合いもあり、観測範囲内では標準治療を逸脱することも少ないです。

  • 人種のバリエーション

ほぼ単一人種の日本と違い、疾患やdemographicsが豊富で、いい臨床経験になります。

  • 移植麻酔

 日本では悲しいくらいに臓器移植の件数が少ないです。こちらでは移植麻酔が多く、それほど特別には感じなくなります。

 

といった具合です。

このブログは書く人によって重要だと思っているところが異なり、比較できるのがいいところですね。もしご意見・ご質問があればTwitter(@jpusanes)までどうぞ。答えられる範囲でお答えいたします。

*1:インターン:1年目レジデントのこと。

レジデンシー:計4年間。日本でいうと後期研修にあたる。1年目は内科・外科・transitional yearのいずれかのインターンとして過ごす。麻酔科レジデンシーは後半3年間にあたる。レジデンシー修了で専門医を得られます。

フェローシップ:心臓、産科、小児、ペインなどのサブスペシャリティーを得るための期間。1年間が多い。

アテンディング:いわゆる上級医、外回り。

Private practice:麻酔科医集団の法人。

*2:アメリカでも搾取の構造は存在するので、それはまたデメリットを書く機会があれば