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Dis1. 海外に出るメリットは? ポスドク×循環器×欧州の場合

初投稿です byピアニシモ!

私は、循環器科医として主にカテーテルインターベンションの研鑽を積んだ後、母校の大学院に進学し、ここで基礎研究に従事しました。縁あって、2018年4月よりドイツはMax-Planck-Institute for Heart and Lung(マックスプランク心臓肺研究所)に博士研究員として在籍しています。私の場合は、数年後に帰国することを前提とした、いわゆる「海外留学」という形になります。

今回、海外に出るメリットについて、自分の立場で思うことを書いてみたいと思います。

 

1. 国際的な考え方が身につく

まずはブロードに。

私のラボには十数名のスタッフ(PI・研究者・技術者)に加え、私のような博士研究員と博士課程の学生が合計で30名程在籍しています。ドイツ人は全体の約3分の1で、他はアジア(中国、韓国、フィリピン、日本)、インド、ロシア、ドイツ以外の欧州国、中南米(メキシコ、アルゼンチン)など、国際色豊かなメンバーで構成されています。

日本を離れ、様々な国の人たちと接触することで、客観的でグローバルな考え方が自分の中に育まれていると実感しています。これまで日本にいた時にはあまり考えもしなかったようなこと、例えば日本の文化・言語の独自性、日本の医療・研究の良さや問題点を見つめ直したり、研究分野で世界をリードし続ける米国や急成長を遂げている中国、その後を追うインドのこと、また活発化する国際研究ネットワークの中で日本が生き残るための術、それから移民政策や英語教育のあり方などについて、調べ物をしてはぐるぐると日々思考を巡らせています。

この国際的な考え方が養われる、というのはどのような立場で海外に出ても共通する点だと思いますが、他民族比率の多い米国やドイツなどではより大きな影響があるかもしれません。

 

2. 研究環境が恵まれている

研究を目的として海外へ渡航する場合は、大抵はその分野で地位のあるラボに行くことになるかと思います。私のラボも然りですが、恵まれた研究環境が用意されていると日々感じています。まず1点目として、研究資金が潤沢にある、というのは非常に大きいです。2点目は、徹底した分業によってチームとしての効率が上がっているということです。大学院時代は自分でやっていた実験動物の遺伝子型判定などを含め、多くの日常的作業を技術員が担ってくれていますし、実験動物の飼育は飼育員によって適切に行われ、私たち研究者はコンピュータ上でそれを管理するだけで十分です。また、ある程度特殊な解析手法に関しては、それぞれの専門家が施設内におり、研究者はサンプルを用意して彼らに手渡すだけ、ということが多々あります。これらの過程は、中途半端な理解で研究者自身が行うよりも、圧倒的に正確で迅速です。3点目には、セミナー等を通して内外の研究者同士の交流が活発に行われており、共同研究も盛んに展開されている、という点が挙げられます。

 

3. 日本には未導入の治療が展開されている・症例が集約されている

少し臨床に関するお話をします。私の在籍する研究所のすぐ隣には、年間にPCI(経皮的冠動脈インターベンション)3000件、TAVI(経カテーテル大動脈弁置換術)500件、そしてここヘッセン州で最多の約3000件の心臓血管外科手術を行う心臓病センターKerckhoff Klinikがあり、臨床現場へのアクセスも可能です。

欧州の循環器医療の最大の特徴は、新規医療機器の導入が早い、という点です。TAVIに代表される構造的心疾患(Stractural Heart Disease; SHD)に対するインターベンションの領域では特にその特徴が色濃く表れ、日本はもとより米国にも先駆けて、最新の機器を用いた新しい治療法が展開されています。またドイツでは、Kerckhoff Klinikのような心臓病センターは人口100万人に1施設作られ、全土で約80施設と集約化されています。その分、1施設あたりの症例数は増え、そこに在籍していれば多くの症例を経験できると同時に、研究材料としてまとまったnのデータを扱うことも可能でしょう。なお、現地医師免許に関する詳細は、国・州によって異なります。

 

4. 余暇の楽しみや家族としての成長も

日本で勤務医として働く生活に比べると、仕事以外の時間が増え、その分、家族との時間余暇の時間を楽しむことができます。ここは見所満載のヨーロッパ、日本から訪れるとなると大変な場所でも、週末にひょいと出かけることができ、気軽に旅行気分が味わえます。また、本場の音楽や美術を嗜んだり、サッカー観戦なども良いでしょう。こういった余暇の楽しみも、海外生活の大きな醍醐味と言えるでしょう。ドイツでは1年に6週間もの休暇を取ることが当然とされていて、日本人的感覚からすればそんなに休むのには罪悪感すら覚えてしまうのですが、私もだんだんといい感じにマインドセットされてきています。

一方、異国での生活では、共に暮らす家族が増えれば増えるほど、生じる困難も多くなります。しかしながら、そこで皆で一緒に考えて乗り越えていく過程は、家族の絆を強くし、さらにはそれぞれの成長を促すものと実感しています。

 

さて、思いつくままに海外に出るメリットを挙げてみました。私は、最初から留学をしたいという明確なビジョンを持っていたわけではなく、他の選択肢との中で大いに迷い悩み、最終的にはより未知なるものに引き寄せられるようにこの道を決断しました。渡独から間もなく1年という今、この決断をして本当によかったと振り返っていますが、決してこの留学体験を極端に美化するつもりはありません。海外で暮らすのには何かと苦労が伴いますし、人によって向き不向きも当然あると思います。また日本国内でも、キャリアプランや所属施設によっては、より直接的なステップアップが可能な場合もあるでしょう。キャリアの分岐点では直感的で思い切った選択も時として必要ですが、事前にしっかり情報を集めてあらゆる可能性を吟味する慎重さも重要だと思っています。