International Doctors (IDs)

日本は世界で戦える

IDs

Dis 1. 海外に出るメリットは? 心臓血管外科医@フランスの場合

Bonjour.

 私は、ただのいち心臓血管外科医にすぎませんので、名前は伏せさせていただいています。わかっても、そっとしておいてください。

 

 現在、フランスの地方都市の大学病院の心臓血管外科で働いています。ただし、フランスの医師免許は持っていませんので、肩書きはリサーチフェローで、所属は実際とは別の病院の研究施設になっています。

 

はぁ、病院が違う?『ちょっと何言ってるか分からない』と言われそうなので…

フランスでは、大学病院(CHU)といっても、日本の様に大学内に全ての科がある総合病院が一つあるのではありません。大学のところに総合病院がありますが、別のところに、違う総合病院があったり、別のところに専門の病院があったりしています。つまり、大学病院が都市の中で散らばっているのです。

私のところは、循環器部門は独立した病院となっており、大学からは遠いです。そのため、循環器部門以外の科の医師に会うことは、ほぼありません。名目上の私の所属は、その循環器専門病院のすぐ近くにある老年医学専門の病院の研究施設になっていますけどね。

 

その循環器専門病院で何をしているかというと、手術だけをやっています。手術室での扱いは、インターン(日本で言う、初期、後期研修医)と同じ扱いです。医師免許ないので、病棟業務や当直等のその他の仕事は一切ありません。そのため、病院からの給料はありません。あいた時間で、臨床データ集め、論文を書いたりしています。フランスは、いい加減な国なので、病院の許可があれば、その病院のみで手術(カテーテルも同様)に入れることになっています。外科系で日本からフランスにリサーチで留学する方は、研究はせずにほぼ同様のことやっていると思います。

 なので、私は研究については、何もわかりません。

 

前置きが、非常に長くなりましたが、discussion テーマである「海外にでるメリット」について書いてみます。 (デメリットも多々あり、こっちの方が書きやすいのですが…)

私は、英語圏でないところに、研究の名目で行って、研究もせずに、ただただ手術のトレーニング、勉強をしているだけです。なので、海外行かれている他の先生とは少し考え方が違います。書くことも違うと思いますので、ご了承ください。

 

  1. 何と言っても、バカンスが長い

 フランスは、働いている人には、バカンスがあります。一番長いのが、夏のバカンスです。4週間もらえます。そのほか、春、秋、冬に1週間ずつバカンスがあります。とるかとらないは自由ですが、せっかくなので全ていただきました。フランス人は、きっちりバカンスを取ります。その間に、フランス国内旅行やヨーロッパ旅行を楽しめます。バカンスを学校のバカンスに合わせてとったので、ヨーロッパ旅行では、フランス人がいっぱいでした。(笑)

 

  1. 語学力?

英語なら良かったのですが、フランス語ですからね。難しいです。相当勉強していかないとついていけません。私は、いまだにフランス語があまり話せません。仕事場では基本フランス語で会話なので、なかなかつらいです。コミュ障の様になっています。1年間いれば、買い物やレストランなどは問題ない程度にはなりますがね。

 

  1. 症例の多さ

 私のいる病院は、年間2000例以上の開心術が行われています。TAVI(経カテーテル大動脈弁留置術)やMitral Clip(経皮的僧帽弁形成術)も行われています。その他に、EVAR(腹部ステントグラフト挿入術)、TEVAR(胸部ステントグラフト挿入術)もやってますし、下肢動脈のEVT(血管内治療)、バイパスもやってます。日本で一番多い榊原記念病院が、開心術年間1000例ほどなので、その多さがわかりますよね。なので、いろいろな手術が勉強できます。いろいろなトラブルも経験できます。症例数が多いので、臨床データで論文が書けます。フランスは、新しいデバイスがすぐに使えるようになるので、日本で見たことのない便利なデバイスや、最新の人工弁やデバイスが使えるようになります。

外科医の数は、日本のハイボリュームセンターと同じぐらいか少ないぐらいです。なので、外科医は大変です。月から金まで毎日、朝から夜まで手術に入ることができますよ(いいことなのかなぁ…)。土日は、完全フリーなので、土日とバカンスで休養するということで。

 

  1. 日本の良さの再確認

 フランスでは、手術経験数が多いので、必然的に、手術がうまくなります。ただ、誰もが術者になれるわけではありませんが。しかし、手術数が多いということは、1日にできるだけ多くの手術をこなさいといけなくなるので、一つの手術を早く終わらさなければなりません。そのため、ほとんどの開心術は、胸骨正中切開で行わています。ただ、手術は早いです。日本の半分ぐらいの時間で終わります。血がすぐ止まる体質もあると思いますが。

日本では、いかに小さな傷で行うかが、より低侵襲であると考えますが、こちらでは、手術時間をいかに短くするかが、低侵襲であると考えられています。

私は、日本のハイボリュームセンターで働いていたこともあり、胸骨を切らない低侵襲心臓手術(MICS)を数多く見てきました。術後のこともよく知っています。確かに、手術が早いことは非常に素晴らしいことなのですが、日本のこのMICSの技術は、世界に誇れるものだと思います。

 

  1. 家族との時間

私がフランスに来たかった一番の理由はこれです。

日本では、平日は夜中(だいたい0時ごろ)に帰ってきて、朝早くに出て行く生活をしていました。子供の寝ている顔しか見れませんでした。大学病院時代は、それに週末のバイトが入るため、ほとんど家にいない状態になります。

こちらでは、平日は、手術が終わったら仕事終了なので、夕方ぐらいには家に帰れます。たまに遅い時がありますが、それでも22時以降になったことはありません。土日は完全フリーですし、バカンスもあります。家族とたっぷり過ごせます。日本に帰るのが嫌になります。ただ、お金がかかるのが一番痛いですが…。

 

 

私は、1年間という短い期間限定で、現地の医師免許のない状態での臨床しかやっていない留学という変わった形なので、あまり参考にはならないと思います。良いこともありますが、それ以上に、嫌なこと、大変なこともあります。でも、それは、実際に海外で暮らして働いてみないとわからないことなので、全てが貴重な経験となります。(と思いたい…)

医療、仕事に対する考え方も少し変わりました。帰国してから、それがどう影響するかわかりません。ただ、良い方向に影響する様にはしたいです。